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アコーディオンのメーカー比較|ホーナー・トンボ他5社

更新: 河野 拓海
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アコーディオンのメーカー比較|ホーナー・トンボ他5社

アコーディオンは、ホーナーやトンボ、ローランドのように比較軸がそろわない楽器である。店頭で「予算はいくらですか」より先に身長と演奏姿勢を確かめるようにしてから、返品や買い替えの相談は目に見えて減った。

アコーディオンは、ホーナーやトンボ、ローランドのように比較軸がそろわない楽器である。
店頭で「予算はいくらですか」より先に身長と演奏姿勢を確かめるようにしてから、返品や買い替えの相談は目に見えて減った。
GT-60Bの145,200円からBRAVO III 96の363,000円まで価格の差は大きく、34鍵60ベース・34鍵72ベース・37鍵96ベースを先に見極めるだけで、選ぶ順番が変わってきます。
集合住宅での練習や体格との相性まで含めて考えると、重量を価格と同じくらい前面に出して比べるのが近道です。

【結論】目的別のおすすめ早見表

アコーディオン選びは、価格帯・重さ・音色傾向・修理体制の4軸で見ると迷いが減ります。
カタログはメーカーごとに強調点が違うため、同じものさしで並べ直す作業そのものに価値があるからです。
まずは自分がどの条件を最優先するかを決め、そのあとで細部を詰めていきましょう。

こんな人はこのメーカー:5パターン早見表

最初の1台で予算を抑えたいなら、トンボ GT-60B が起点になります。
34鍵60ベースで標準価格145,200円(税込)という入り口は、国産入門機の基準線として見やすく、ソフトケースと背負いバンドが付属するので始める準備も整えやすいです。
軽さを最優先するならホーナー BRAVO III 72、約7.4kgという数字は店頭で持ち比べたときに効いてきます。
国産で修理の安心を買うならトンボ グランデール、将来まで見据えた本格志向ならエクセルシャー等のイタリア系、集合住宅で音量が心配ならローランド FR-1X が候補になります。
約6.5kgでスピーカー内蔵、音量を絞って練習しやすいのは電子ならではです。
自分の行に当てはまるものがあれば、この先を飛ばしても構いません。

店頭では、数字より体感が先に勝つ場面を何度も見ました。
カタログ上は7kg台なら問題ないと言っていた人が、5分で肩を回し始めることは珍しくありません。
楽器店で入門者にまず本体を体に当てて10分立ってもらうのは、その乖離を確かめるためでした。
41鍵120ベースを「とりあえず大きいのを買っておけば長く使える」と選んだ人が、半年後に34鍵60ベースへ買い替えに来たこともあります。
重くて出しっぱなしにできず、ケースから出す手間で練習頻度が週3回から月1回に落ちたという相談でした。
サイズは将来性だけで決めず、机から取り出してすぐ弾けるかまで含めて考えたいところです。

迷ったら34鍵60ベースから始める理由

入門者が店頭で比較する中心は、34鍵60ベース・34鍵72ベース・37鍵96ベースの3帯にほぼ収束します。
60ベースは始めやすさと軽快さ、72ベースは対応曲と重さの釣り合い、96ベースは将来の不足感の少なさに寄るため、最初の1台では60ベースが「妥協」ではなく「継続のための設計」になります。
最初から大型を選ぶと、持ち出しの心理的負担と実重量が積み重なり、練習そのものが止まりやすいからです。
続ける前提で考えるなら、まずは弾く回数を確保しましょう。

予算のレンジ感も先に置くと判断しやすくなります。
トンボ グランデール GT-60B の145,200円(税込)は国産入門機の基準として分かりやすく、ホーナー BRAVO III 96 の363,000円は96ベース帯の上限側を示します。
この2点を両端に置くだけで、自分が「入口を探しているのか」「一段上を見ているのか」が見えます。
金額から入る読者が多いなら、まず数字を見てから音色の話に進む流れが自然でしょう。

この記事の比較軸

比較は価格帯・重さ・音色傾向・修理体制の4つにそろえます。
メーカー各社のカタログは、ベース数で語る会社もあれば、音色スイッチ数や音源スペックで押す会社もあり、並べただけでは違いが見えません。
同じ4項目に統一して見直すことが、読者には意外とできない作業です。
だからこそ本記事では、好みの印象論ではなく、選ぶための差が見える形に整えていきます。

国産のトンボは、グランデールシリーズを軸に見ると整理しやすいです。
GT-60B は34鍵60ベースで、M.M.L仕様のリードにソフトケースと背負いバンドが付属します。
GT-96 は37鍵96ベースで232,980円、ベース部にメジャー・マイナー・セブンスに加えてディミニッシュコードを備え、メロディースイッチで5音色を選べます。
価格だけでなく、修理導線と部品供給が国内で完結する点は、長く持つほど効いてきます。

ホーナーは BRAVO シリーズの幅が広く、BRAVO II 48 から BRAVO III 120 まで7種類あります。
BRAVO III 72 は34鍵72ベースで約7.4kg、BRAVO III 96 は363,000円、BRAVO III 120 は390,000円です。
ボタン式では NOVA III 96 が418,000円・3ヴォイス構成で、入門帯では珍しい選択肢になります。
イタリア系のエクセルシャー、ブガリ、ヴィクトリア、ゲリーニは1924年ニューヨーク設立のエクセルシャーが1948年にカステルフィダルドへ工場を移した系譜にあり、上位帯ではリードの等級と構成が音の幅を広げ、そのぶん重量と価格が上がります。
電子ではローランド FR-1X が約6.5kgでスピーカー内蔵、PBM音源と高精度ベローズセンサー、USBメモリー端子で WAV・MP3 再生に対応し、集合住宅の練習制約をやわらげます。

主要5メーカー比較一覧表

5メーカーを同じ物差しで並べると、価格差、重さ、音色の方向性、修理のしやすさが一目で見えるようになります。
店頭でカタログを広げたときに「結局どこが違うんですか」と聞かれるのは当然で、各社が別々の項目を強調するほど比較は難しくなるからです。
そこで、筆者は8列を固定した表にして案内するようになり、商談時間は半分ほどで収まるようになりました。

5メーカー統一比較表

メーカー生産国代表入門機価格帯重さ音色傾向修理体制向いている人
ホーナードイツBRAVO III 80 / BRAVO III 96 / BRAVO III 120約180,000〜340,000円、363,000円、390,000円BRAVO III 72は約7.4kgドライ寄り、レスポンスが速い該当なし輸入機の質感を重視し、価格と仕様を見比べて選びたい人
トンボ日本GT-60B / GT-96145,200円、232,980円34鍵60ベースは軽快、37鍵96ベースは9.1kg前後まとまりがあり、立ち上がりは穏やか国内で部品供給と修理導線が完結予算を抑えつつ、国産の実利を取りたい人
エクセルシャーイタリア代表入門機は非公表非公表非公表ウェット寄り、厚みが出やすい該当なし価格より音の広がりや上位機の思想を重視する人
イタリア系高級ブランドイタリア代表入門機は非公表非公表非公表ハンドフィニッシュ由来の幅が広く、表現の余白が大きい該当なし将来の買い替えを前提に、長く使う前提で選びたい人
ローランド日本FR-1X約6.5kg、スピーカー内蔵約6.5kg反応が速く、音量制御がしやすい該当なし住環境の制約を先に解きたい人

表はメーカーごとに別の見方をせず、同じ列を必ず埋めるためのものです。
空欄を残さず「該当なし」と書くのは、情報の有無そのものも判断材料だからです。
価格帯を実数で並べると、同じ入門機でもトンボの145,200円とホーナーの363,000円、390,000円が同じ棚に並ぶ現実が見えますし、国産14万円台と輸入36万円台の差がそのまま比較軸になります。
ローランドFR-1Xは約6.5kgでスピーカー内蔵という点が独特で、重量と音量の両制約を同時にほどくため、アコースティック機と並べて検討する意味があるわけです。

アコースティックと電子を同じ表で見る意味

アコースティック4社と電子1社は、ふつう別カテゴリとして扱われます。
ただ、読者の意思決定は「どちらを買うか」という1つの選択です。
音が良くても重すぎれば続きませんし、軽くても音量の問題で弾けなければ候補から外れます。
だからこそ、重量、価格、修理、住環境への適合を同じ土俵で見る必要があります。

音色傾向は主観で押し切らず、ドライ寄りかウェット寄りか、レスポンスが速いか立ち上がりが穏やかか、という相対表現にとどめるのが筋です。
メーカー名で優劣を決めるのではなく、設計思想の違いを読み取るための軸として使う。
最終的には試奏で確かめる前提にすると、表の情報が生きます。

表だけで決めてよい人・詳細を読むべき人

予算と重量で候補が1つに絞れたなら、そのまま最終チェックへ進んで構いません。
たとえば国産の軽いモデルを優先するか、ローランドFR-1Xのように住環境を優先するかが決まっている人は、表の段階でほぼ結論が出ます。
おすすめです。

ただし、2社以上が残るなら各社の詳細セクションを読んでください。
トンボは国内修理の実利が強く、ホーナーは輸入機らしい価格帯と仕様差があり、エクセルシャーやイタリア系高級ブランドはリード構成と音の厚みで考え方が分かれます。
そこまで見て初めて、「自分に合う1台」が見えてきます。
試してみてください。

ホーナー:入門機の世界標準をつくったドイツの老舗

ホーナーの入門帯は、ベース数を細かく刻んで選びやすくしている点がまず目を引きます。
BRAVO II 48からBRAVO III 120まで7種類がそろい、48・60・72・80・96・120と段階を追えるため、予算だけでなく体格や練習環境まで含めて候補を絞り込みやすい構成です。
入門機でもグリルやレジスターボタン、鍵盤のタッチノイズを抑えたサイレントキーまで手を入れており、価格帯だけでは見えない完成度がこのシリーズの強みでしょう。

Bravoシリーズ:48ベースから120ベースまで7種の刻み

BRAVOシリーズは、小型のBRAVO II 48から大型のBRAVO III 120まで7種類が用意されていて、ただ上位機へ伸ばすのではなく、入門者が自分の位置を見つけやすい刻み方になっています。
48ベースは軽さと扱いやすさを優先し、72ベースや80ベースになると対応できる曲の幅が広がる。
さらに96ベース、120ベースまで同じシリーズ内でつながるので、最初の1台を選ぶ段階から将来の買い替えまで見通しやすいのです。

店頭でBRAVOの48ベースと72ベースを並べて試奏してもらうと、音の厚みで72ベースを気に入る人は多いです。
ところが、約7.4kgのBRAVO III 72を10分ほど構えてもらうと、半数ほどが48ベースに戻ります。
音の魅力と身体の負担がその場でぶつかるからで、ここに入門機選びの本質があります。
BRAVO III 72は34鍵・72ベースで約7.4kg、60ベースならさらに軽くなるので、小柄な人にはこの差がそのまま続けやすさになります。

ボタン式を狙うならNOVAという選択肢

ボタン式クロマチックを最初から狙うなら、NOVA III 96という選択肢が入ってきます。
418,000円で、3ヴォイス(3リード)構成という仕様は、ピアノ経験がないままボタン式で始めたい人にとって現実的な入口になりうるでしょう。
入門帯でボタン式までそろえるメーカーは限られるため、単なる上位機ではなく「最初の選択肢として存在する」こと自体に価値があります。

このタイプは、鍵盤式とは運指の考え方が変わるので、最初に触れたときの印象が強く残ります。
だからこそ、ボタン式に憧れがある人は、スペック表の比較だけでなく、最初の持ち替えやすさと音の出し方まで含めて見てみてください。
NOVAはその比較対象として、かなりはっきりした位置を占めています。

メリット・デメリットと向いている人

ホーナーのメリットは、ラインナップの刻みが細かく、入門機としての完成度も高いことです。
グリルやレジスターボタンの作り込みに加えて、サイレントキーのような細部が効いてくるので、集合住宅で夜に練習したい人ほど差を感じやすい。
試奏室で照明を落として鍵盤のカタカタ音を比べると、口頭説明では伝わらない違いがすぐにわかり、実際に住環境を理由に機種を変える人も何度もいました。

気になる点は、国産機に比べて価格帯が高めなことと、修理が代理店経由になりやすい点です。
そこをどう見るかで評価は分かれますが、予算35万円前後を確保できて、将来はベース数を増やしながら同一シリーズで育てていきたい人には向いています。
逆に、まず軽さだけを最優先するなら60ベース、音域と負担の釣り合いを取りたいなら72ベースが本命になりやすいです。

トンボ:国産ならではの修理と保証の近さ

グランデールの強みは、価格と修理導線を国産の距離感でまとめて持てるところにあります。
GT-60Bは34鍵60ベースで標準価格145,200円(税込)、リードはM.M.L仕様。
GT-96は37鍵96ベースで232,980円となり、そこまでを同一メーカー内でつないで考えられるので、最初の1台から次の段階まで見通しを立てやすいのです。

グランデールGT-60B/GT-96の価格と仕様

GT-60Bの145,200円(税込)という数字は、輸入入門機の18万円〜36万円台と比べたときに、最初の一歩を踏み出す心理的な壁をかなり下げます。
34鍵60ベースのサイズ感なら、初心者が抱えがちな「重すぎないか」「続けられるか」という不安も抑えやすいでしょう。
しかもリードがM.M.L仕様なので、音の厚みを出しながらも、入門機として扱いやすい設計にまとまっています。
安さだけでなく、始めやすさに理由がある価格です。

GT-96は37鍵96ベースで232,980円。
ベース部にメジャー・マイナー・セブンスに加えてディミニッシュコードまで載るため、和音の選択肢が一気に広がります。
ディミニッシュが使えると、ジャズやシャンソン系の和音進行に入りやすくなり、60ベースでは届きにくい場面にも対応しやすい。
60ベースから96ベースへ、同じメーカーの中で段階的に進めるのは、買い替え時の迷いを減らすうえで実利があります。

音色面でもグランデールは使い勝手がいいです。
メロディースイッチで5つの音色を選べるので、独奏で前に出したい響きと、アンサンブルでなじませたい響きを切り替えられます。
入門者は音色を1つで済ませがちですが、練習を続けるうちに「同じ曲でも雰囲気を変えたい」と感じるものです。
そこに応えてくれる機能は、地味でも継続に効きます。

GT-60Bにはソフトケースと背負いバンド(ストラップ)が付属します。
ここを見落とすと、本体価格の安さだけで判断してしまい、あとから総額が膨らむことになります。
輸入機ではケースやストラップが別売りになる場面があり、会計時に追加数万円が乗って青ざめたお客さんもいました。
それ以来、見積もりは必ず付属品込みで出すようにしています。

国産を選ぶ実利:修理導線と部品供給

国産機を勧める理由は、音の好みだけではありません。
実際には修理の速さが継続を左右します。
輸入機の調整で代理店に送ると、戻るまで1か月以上かかることがあり、そのあいだに練習習慣が切れてしまう人を何人も見てきました。
楽器は、直る速さがそのまま再開のしやすさになるのです。

修理導線が近いと、相談のハードルも下がります。
細かな不調や消耗部品の話を国内で完結できれば、演奏を止める時間を短く保てる。
部品供給が安定していることも含めて、国産の実利は「安心して弾き続けられる」点に集約されます。
とくに入門期は、少しの中断がそのまま離脱につながりやすいので、ここは軽く見ないほうがいいでしょう。

メリット・デメリットと向いている人

メリット

  • 価格が手頃で始めやすい
  • 修理導線が近く、相談しやすい
  • 部品供給が安定しやすい
  • 付属品込みで総額を抑えやすい

デメリット

  • 音色の個性は比較的まっすぐで、好みが分かれうる

向いている人

  • 初期投資を抑えつつ長く弾き続けたい人
  • 購入後の修理や調整を国内で相談したい人
  • 付属品を含めた総額で無理なく選びたい人

こうして整理すると、グランデールは「最初の1台」に向いた現実的な選択肢だとわかります。
価格、仕様、付属品、修理の近さがそろっているため、買って終わりではなく、続けるところまで見据えやすい。
おすすめです。

エクセルシャーとイタリア系高級ブランド

エクセルシャーは1924年にニューヨークで設立され、1948年にイタリアのカステルフィダルドへ工場を移してから評価を広げました。
カステルフィダルドはアコーディオン製造の集積地で、ここに根を下ろしたことで、イタリア系ブランドに共通する職人技術の文脈へ自然に接続したわけです。
ブガリ、ヴィクトリア、ゲリーニも同じ地場のものづくりの流れにあり、ブランド名だけでは見えない製造背景を知ると、楽器選びの見方が少し変わります。

エクセルシャー:ニューヨーク発・カステルフィダルド製

エクセルシャーの歩みで見落としにくいのは、単なる老舗というより、生産拠点の移動そのものがブランド価値を押し上げた点です。
ニューヨークで始まり、カステルフィダルドに移ったことで、アコーディオンづくりの中心地に乗り、設計だけでなく仕上げの精度でも評価されやすくなりました。
ここで重要なのは、イタリア製というラベルの印象より、職人の蓄積が音の説得力を支えていることだと思います。

価格差の正体はリードの等級と枚数

価格差の主因はリードの等級です。
リードはハンドメイド(handmade)、ティポアマーノ(tipo a mano)、ハンドフィニッシュ(hand finished)、マシンリードに分かれます。
入門機はマシンリードを採用し、高級機は職人が仕上げたリードを積みます。
実際、同じ曲を弾いて聴き比べてもらうと、半数以上の人が「違いが分からない」と正直に言います。
しかし、それは耳が悪いのではなく、まだ価格差を音として回収できる段階に達していないだけです。
筆者はその反応を、今は買い時ではないサインとして受け止めてきました。

枚数も見逃せません。
安価な機種ではMM(中音2枚)やML(中音+低音)が主流で、グレードが上がるとMML・MMML・HMMLと3〜4枚構成になり、音色の選択肢と厚みが増します。
ただし、枚数は豪華さの指標ではなく、重量と価格とのトレードオフです。
3年ほど弾いたお客さんが再来店して「今の楽器だと自分の出したい音が出ない」と言語化できたときに初めて上位帯を勧めると、買い替え後の満足度は明らかに高くなりました。

メリット・デメリットと向いている人

上位機のメリットは、音色の表現幅が広く、楽器としての寿命も長いことです。
反対に、デメリットは価格と重量、そして入門段階では違いを活かしきれない点にあります。
だからこそ、60〜96ベース帯で1〜2年弾き、自分の音の好みが言語化できるようになってから検討する流れが自然でしょう。

向いているのは、すでに数年の演奏経験があり、明確に音色の方向性を求めている人です。
高級機は早く買えば得という類のものではなく、欲しい音が先に固まっている人ほど満足しやすい。
焦らせない接客を続けてきた理由はそこにあります。
おすすめです。

ローランド Vアコーディオン:電子という第4の選択肢

ローランド VアコーディオンのFR-1Xは、約6.5kgという軽さにスピーカー内蔵を組み合わせた電子機で、PBM音源と高精度のベローズセンサー、USBメモリー端子まで備えています。
34鍵72ベースのアコースティック機が約7.4kgあることを思うと、電子だから重いという先入観は数字で崩れるでしょう。
しかも音量を絞れるだけでなく、ヘッドホンで練習音を消せるので、住環境が理由でアコーディオンを諦めていた人にとって現実的な選択肢になります。

FR-1Xの仕様と、集合住宅で効く音量調整

FR-1Xの魅力は、単に「電子で鳴る」ことではありません。
約6.5kgで持ち運びやすく、スピーカーを内蔵し、PBM音源と高精度のベローズセンサーで蛇腹の動きを音に変えられる点にあります。
USBメモリー端子でWAV・MP3の再生にも対応するので、練習用の音源を持ち歩きやすいのも強みです。
電子アコーディオンはキーボードの延長ではなく、蛇腹の操作をそのまま表現に変える楽器だと考えると、この仕様の意味が見えてきます。

集合住宅で効くのは、音量を自分で管理できることです。
アコースティックのアコーディオンは、蛇腹を動かせば必ず鳴ります。
音量の逃げ道がないから、夜間や早朝はどうしても演奏を控えがちになる。
電子ならボリュームを絞って小さく弾けますし、ヘッドホンを使えば周囲に音を出さずに練習できます。
実際、夜10時以降しか時間が取れない会社員のお客さんにアコースティックを勧めてしまい、半年後に「結局ほとんど弾けていない」と言われたことがありました。
生活時間から逆算せずに楽器を選ばせた失敗です。
それ以来、まず練習できる時間帯を聞くようになりました。

蛇腹の追従を体で感じてもらうと、電子への印象が変わる場面も多いです。
電子アコーディオンを勧めると「それは本物じゃない」と言われることがあるのですが、実際に持ってもらうと反応が変わります。
ベローズセンサーが押し引きの強弱にきちんと追従すると、音の立ち上がりや息づかいが自然に返ってくるからです。
カタログのスペック表では伝わりにくい部分ですが、ここが崩れるとアコーディオンらしい奏法は成立しません。

電子を選ぶと失うもの

ただし、電子を選べば失うものもあります。
楽器としての経年変化、リードの個体差から生まれる音の癖、そして使い込むほどに深まる手応えです。
アコースティックの中〜高級機が50年使えるのに対し、電子機器は音源やセンサーがいつか陳腐化します。
長く付き合うほど味が出る道具と、技術の更新とともに前提が変わる道具では、時間の積み重なり方が違うのです。

この差は、音色の好みだけでなく、楽器を資産として見るかどうかにもつながります。
アコースティックは、鳴りが育つ楽しみがあります。
対して電子は、再現性と利便性を手に入れる代わりに、古びることの価値を手放すことになる。
だからこそ、何を大事にするかを先に決めておくと迷いにくくなります。

メリット・デメリットと向いている人

FR-1Xを軸に電子アコーディオンを整理すると、メリットは軽量、音量調整、多音色、音声ファイル再生の4点です。
デメリットは、経年変化の楽しみが薄いこと、長期の耐用年数をアコースティックと同じ感覚で見込みにくいこと、そして価格が入門アコースティック機より高くなりやすいことに集約されます。
こうして並べると、電子は「妥協案」ではなく、生活条件に合わせて選ぶ合理的な選択だとわかるでしょう。

向いているのは、集合住宅で夜間に練習したい人と、体格的にアコースティックの重量が厳しい人です。
とくに仕事や家事の合間に短時間だけでも確実に練習したいなら。
逆に、楽器の鳴りが育つ過程そのものを味わいたい人や、50年単位での付き合いを前提にしたい人には、アコースティックのほうが満足度は高くなりやすい。
どちらが上かではなく、どちらが生活に合うかで選んでみてください。

鍵盤数・重さ・予算で絞り込む最終チェック

鍵盤数とベース数が増えるほど、アコーディオンは確実に重くなります。
41鍵120ベースで11.7kg、41鍵96ベースで10.3kg、37鍵96ベースで9.1kg、34鍵72ベースで約7.4kgという差は、数字以上に背負った瞬間の負担として効いてきます。
だからこそ、機能を盛るか軽さを取るかを、最初に体の側から決めておくべきです。

鍵盤数・ベース数と重量の対応

重量の目安を並べると、41鍵120ベースで11.7kg、41鍵96ベースで10.3kg、37鍵96ベースで9.1kg、34鍵72ベースで約7.4kgです。
41鍵と34鍵では4kg以上の差があり、短時間なら気にならなくても、立って構え続ける練習では疲労の出方が変わります。
体格の小さい人ほど軽いモデルが弾きやすく、鍵盤やボタンが増えるほど重量が増すという原則は、この実数を見ると腑に落ちるでしょう。
通販で候補を絞る前に、店頭で10分間立って構え、肩を回したくならないか確かめてみてください。

中古の見極め:蛇腹とリードは外から見えない

中古アコーディオンは、外見がきれいでも中身が傷んでいることがあります。
精密な機構のほとんどが箱の中に隠れており、とくに蛇腹(ベローズ)は心臓部です。
破れだけでなく、摩擦で固くなっていないか、開閉時に異音がしないかを見てください。
リードも全音域で発音を確かめる必要があります。
中古で安く買えたと喜ばれていた楽器を開けたら、蛇腹の内側が広範囲に劣化していて、修理見積もりが本体価格の3倍になったことがありました。
外からは新品同様に見えても、箱の中が見えない楽器はそこが怖いのです。

予算別・最終的な1台の決め方

修理費は、簡単な内容なら1万円以内で収まることもありますが、劣化がひどいと20万円以上かかり、新品が1台買える規模になります。
中古アコーディオンの買取相場が10,000円〜300,000円前後まで広いのは、メーカー差より状態差が大きいからです。
価格の安さだけで飛びつくと、あとで出費が膨らみます。
知識のない出品者との個人売買は避けたほうがいいでしょう。

長く使うつもりなら、扱い方まで含めて考えるべきです。
20年以上前に買ったトンボの入門機を、調整だけで現役のまま大事に使っているお客さんがいました。
逆に、購入から3年でケースに入れっぱなしにして蛇腹が固着した個体も見ています。
取扱いと保存に注意しメンテナンスを続ければ、中〜高級機は50年は使い続けられますから、14万円台の国産入門機も36万円台の輸入機も、年あたりのコストで見れば見え方は変わります。
初期価格より、弾き続けられる1台かどうかで選びましょう。

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河野 拓海

音楽専門学校でサックスを専攻後、楽器店スタッフとして10年勤務。年間100名以上の入門者に楽器選びをアドバイスしてきた経験から、予算・環境に合った現実的な提案を得意とします。

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